私たちが日常生活で商品を選ぶとき、その商品の効果や安全性は気になるものです。ご存知の通り、医薬品もさまざまな臨床試験で有効性と安全性を確認した上で、認可されて発売されるという経緯をとります。
テレビで流される情報、パソコンやスマホで検索して得られる情報のどちらも、その情報の信憑性が大きな問題となります。国の認定基準を満たしたもので〇〇マークを表示している、有名シェフ監修あるいは有名店監修の食べ物である、医師監修の医療や健康系情報、などその道の専門家のお墨付きがあれば、消費者は安心感を得ることができます。
医学は日々進歩しており、数年前の教科書に載ってある知識がすでに古いものであるということはしばしば経験します。そのため進歩する医療情報について監修する業務はこれからもニーズはあり続けると考えられます。
監修業務を通して、情報を発信することや商品開発に関わることが可能になります。在宅ワークで行うことも可能ですので、魅力的な副業の一つと言えるでしょう。
医師が行う監修という仕事の特徴
監修ってどんな仕事?監修医師に求められるものとは?
監修とは、一般的には著作物の著述・編集の監督をすることを意味します。
医師の監修の場合は、専門書のような書籍や WEB 記事などの著作物に限らず、医療ドラマやテレビの情報番組、マンガ、舞台などの医療監修や、商品開発においての医学的な助言を行うようなことなども含みます。
医師としての知識や経験、実績を生かした仕事になります。
医師による医療・健康系記事の監修
パソコンやスマホが普及したことで、病気や症状などについて詳しく説明されている記事をネット上で目にすることが増えてきました。「医師監修」などのように、よく書かれていますよね。
医療系のオウンドメディアでは、情報の価値と質を高めて、検索上位表示を狙うために、それぞれ SEO 対策がなされています。
いろいろとある SEO 対策の一つに「E-A-T」があります。これは Google が定めた WEB コンテンツの検索順位の評価基準になっています。
- E(Expertise):専門性
- A(Authoritativeness):権威性
- T(Trustworthiness):信頼性
サイトのテーマを特化すること、情報量を増やすこと、専門家の執筆・監修、被リンクや引用がある、新しい情報であることなどが求められます。
このような背景もあることから、医療・健康系記事では、医師による執筆・監修のニーズが高まっているのです。
医師によるテレビ番組や医療ドラマ、漫画、舞台などの監修
医学・医療を扱う番組やドラマなどの制作には、医療現場の緊迫感や臨場感を再現することやエビデンスに基づいた台本チェックなどが必要となります。また、外科手技を出演者に指導して医師を演じる補助を行うこともあります。
医療ドラマを面白くする演出も必要ですが、ドラマ内で扱う病気は、現実世界でその病気を患っている多数の患者がいることを忘れずに、不快感のないストーリー展開を提案する必要があります。
実際の医療現場に即した演者の所作や必要な道具などの注意事項についても、医師による医療監修が必要になることがあります。
医師による商品開発の監修
近年、医療系ベンチャー企業などが、医療・ヘルスケア領域で、医療画像や治療アプリ、医療機器、Web 問診などさまざまな医療コンテンツの商品開発を行っています。
医師が起業する例も少なくないのですが、商品開発のために監修医師を外部から必要とするケースもあります。勤務体系は医師側の都合も考慮し、企業側と相談になる場合もあります。
医師監修案件を募集しているサイト・企業
クラウドソーシングサイト:クラウドワークス(https://crowdworks.jp/)、ランサーズ(https://www.lancers.jp/)、ココナラ(https://coconala.com)など
出版社や企業、医療メディア:個別案件につきこのページでは割愛しますが、実績を積むとクラウドソーシングサイトや知り合い経由などでオファーが来るようになります。
医師が監修を行うことのメリット
単価が高めの仕事である
どの業務もそうですが、資格や実績があると単価は高くなります。これまで慣れてきた診療バイトの多くは時間給制という報酬体系であったのに対して、監修の仕事は仕事単価制、という報酬体系になります。
効率よく仕事が完了すると、労力対効果はとても割の良い仕事になります。また、監修業務は雑所得あるいは事業所得であるため、経費計上が可能であり、節税という観点で考えるとメリットはとても大きくなります。
実績を積んでいくと、人脈が広がったり、さらに高単価の案件が舞い込んできたりと、活動の幅が広がる可能性や、副次的な効果も生まれることが期待できます。
無名医師でも、魅力ある商品開発に携わることができる
エキスパートの医師は書籍の監修を行ったり、企業とタイアップして商品開発を行ったりしている例があります。
また、大学などの研究機関では産学官連携のプロジェクトとして、研究室での実績から商業ベースへ発展させることがあります。ただ、このようなケースを経験することのできる医師は少数派ではないでしょうか。
近年、医療ベンチャー企業、スタートアップ企業が台頭し、さまざまな医療コンテンツを開発しています。企業側からは、現場の意見を取り入れたい、特定の領域に詳しい医師から話が聞きたい、というニーズがとても強く感じられます。
監修という立場でもアドバイザー・コンサルという立場でも構いませんが、自分の経験や知識を生かして、より良いサービス開発に関わることは、自身の実績になりますし、面白くてやりがいのある仕事になるでしょう。
医師が監修を行うことのデメリット
記事監修は、記事作成したライターの腕によって仕事量が変動する
記事監修の仕事量は、作成された記事内容の質で大きく変動します。
匿名希望の医師ライターが執筆している場合には、それほど修正する部分は多くないため、時間効率の良い仕事になります。
一方で、医療にそれほど詳しくないライターが書いた記事は、エビデンスに乏しい記事になってしまう可能性があります。
そのような際には、監修医師の名前で記事が公表されるため、文献検索をしなおして記事を加筆修正することになってしまいます。
つまり、時間効率がとても悪くなる可能性もあるのです。このようなことにならないためには、監修時にクライアントにフィードバックをして、医療記事をメインに行っているライターを選んでもらう必要があります。
匿名希望のライティング経験豊富な医師ライターがベストですが、巡り合うことは少ないです。逆に言えば、そのような医師ライターになるとチャンスが多くあるかもしれません。
実名・顔出し・経歴などの個人情報を載せる影響は大きい?
実名や顔写真、経歴など個人を特定するような情報を公にしなければいけないのかどうか、ということは不安に感じる点であると思います。
多くの監修の案件は、個人情報を公表する必要が生じます。実名、所属、肩書、経歴、専門、卒業大学、実績、一言コメント、などクライアントによって要求範囲が異なります。
クライアントとしては、メディア上にどの範囲まで開示してくれるかという点が、信頼性に関わる大事なポイントになるため、事前に自身の許容範囲を考えておく必要があるでしょう。
ペンネームで監修を行うことが可能かどうかは、クライアントとの交渉次第です。
所属によっては、副業違反ではないけれど、バレると困るというケースがあると思います。そのような医師には、まずは記事作成を行う匿名ライターで活動することも考えてみてはいかがでしょうか。
記事監修と異なって実名は公表されませんし、監修者としては良質な記事であれば監修作業が楽であるため、同じライターにリピートして書いてもらいたいという希望も出てくる可能性があります。
そのうち単価の値上げ交渉も可能になるでしょう。あくまでも一つの案として参考にしてもらえれば幸いです。
作品や商品の印象によっては信頼を損なう可能性がある
医薬品や、健康食品、サプリメント、化粧品は大きな市場ですが、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(薬機法(旧薬事法))の解釈基準である医薬品等適正広告基準などによって、広告規制が行われています。
専門家の権威を借りる広告は認められないため、医師が「監修」「開発」「共同研究」したといった露骨な表現は認められません。
禁止されてはいないけれどもグレーゾーンの表現を行う広告に監修医師として協力することは、法に触れたり健康被害があったりするということで信用を失墜させる可能性があります。
まとめ
監修の多くは実名を公表する必要があるため、そのコンテンツに責任を持つことになります。このため、単価は高めに設定されるケースが多くなります。
どの程度まで自分の情報を開示できるのか、ご自身の立場で納得できる範囲を設定しましょう。
普段医療現場で働いている医師にとって医学医療のことで当たり前のことでも、医療従事者でない方にとっては当たり
前ではないことはたくさんあります。
自分の経験や知識を生かして新しいものを作るという体験ができるのも、監修の仕事の魅力ではないかと思います。