副業を行う上でメリットを考える要素として、経費の存在があります。
通常、経費をうまく使うことで、節税が可能になります。副業収入の額面が一見少なく見えても、経費を使うことで、実質的に額面以上の効果があるように感じることができます。
今回は、この経費について深掘りしてみたいと思います。
経費とは?
「今日の懇親会の代金は経費として処理しておきますね♪」
「この仕事を行うには、すごく経費がかかっちゃうな…」
「これは、、、さすがに経費にはならないよ!」
普段さまざまな場面で使われる「経費」という言葉ですが、経費について解説していきたいと思います。
経費は「支払ったお金」のことを指します。
これだけでは、分かりづらいため、具体的な説明をしますね。
「支払ったお金」には、2種類の性格があります。
「資産」と「費用」です。
「資産」とは、お金が減る代わりに得た「モノ」のことで、いわゆる財産になるものです。
土地や建物、車など、お金がモノに変わったならば、それは資産です。
対して、「費用」とは、お金が減るのみで、「モノ」は得られません。
ダクシー代、電話代、会社なら従業員の給与など、お金の代わりにサービスや労働力が得られていますが、形になる「モノ」には変わっていません。
この「費用」に当たるお金が「経費」になります。
経費ってどのように計算される?
税金は、利益に対して課税されます。
雑所得や事業所得であれば、
売り上げ(収入)−経費=利益(所得)
となります。この利益が少なければ、課税額も抑えられるということから、経費をうまく使えば、節税が可能であるということです。
副業で得た収入は、課税所得を計算する際に、経費を差し引くことができます。
例えば、業務に必要な10万円未満のパソコンの購入費や、インターネットなどの通信費、書籍代などはすべて経費として計上できます。
副業所得=副業収入―経費
その上で、副業所得が20万円以上の場合は、確定申告が必要です。
副業収入が20万円超えた場合は、経費を計算してから申告しましょう。
経費は、何でもかんでも計上できるわけではありません。家賃や水道光熱費なども含まれますが、自宅で副業を行う場合には、個人使用分は経費として認められません。事業用と個人使用分を「家事按分」する必要があります。
経費として計上する支出は、領収書などの証拠となる書類を保存しなければなりません。しっかりと保管しておきましょう。保存期間は、法人であれば10年間、個人事業であれば7年間と考えておけば良いです。
なお、副業所得が20万円未満の場合は、確定申告(所得税の申告)は不要です。
しかし、住民税の申告は20万未満であっても必要です。
所得税の申告は税務署(国)に対して行うのに対して、住民税の申告は市町村に対して行うからです。
給与所得者の経費とは?
勤務医も常勤先から給与を得ています。
「普段の仕事についても、考えてみればいろいろと経費がかかっているんだよなー」と感じることがあると思います。実際、そうだと思います。
学会参加費をはじめ、自己研鑽のための勉強代は、一部勤務先が負担してくれる部分もあると思いますが、それで全てまかなえるわけでもありません。学会の年会費が1年間に10万円から数十万円以上かかっている医師は少なくありません。家計的には、ボディーブローですよね。
給与所得者には、所得控除が適用されます。
所得控除には、医療費控除や扶養控除などが含まれますが、所得税額を計算するときに各納税者の個人的事情を加味する目的で設定されています。このような意味合いでは、これが給与所得者にとっての必要経費を考慮された部分と言えます。
また、誰にでも適応される控除として、以前は基礎控除がありました。令和元年までは誰にでも適用されましたが、令和2年より所得が2500万円以上であれば0円となり、控除額がなくなってしまいました。以下の表に示します。
納税者本人の合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
所得の高い給与所得者は、増税になったということです。
また、これとは別に、給与所得者には、特定支出控除という必要経費を考慮する税制があります。
特定支出控除は、以下にあげる費用が考慮されます。
- 通勤費(通勤で必要のある交通機関の利用代)
- 職務上の旅費(職務を遂行するための必要な旅費)
- 転居費(転任に伴う引っ越しの費用)
- 帰宅旅費用(単身赴任で定期的に帰宅するための旅費)
- 研修費用(職務に必要な勉強会への参加費)
- 資格取得費用(資格を取得するために必要な費用)
- 勤務必要経費(職務に必要な図書購入費、衣類購入費、交際)
これらの特定支出をした場合に、その年の特定支出の額の合計額が、特定支出控除額の適用判定の基準となる金額を超えるときは、その超える部分の金額を給与所得控除後の所得金額から差し引くことができるのです。
特定支出控除の適用判定基準の金額=その年中の給与所得控除額×1/2
給与所得控除額は、令和2年分以降では、下記の表のように決まっています。
収入 | 給与所得控除 |
---|---|
162.5万円以下 | 一律で55万円 |
162.5万円を超え180万円以下 | 収入×40%-10万円 |
180万円を超え360万円以下 | 収入×30%+8万円 |
360万円を超え660万円以下 | 収入×20%+44万円 |
660万円を超え850万円以下 | 収入金額×10%+110万円 |
850万円を超える場合 | 195万円(上限) |
具体例を挙げます。どの程度の控除金額かをみてください。
年収800万円で、特定支出が100万円の場合
100万円ー{(800万円×10%+110万円)×1/2}=5万円
年収1000万円で、特定支出が100万円の場合
100万円ー(195万円×1/2)=2.5万円
一度自分の場合で考えてみてください。この計算式で、マイナスになってしまうならば、特定支出控除を受けることはできません。
特定支出控除を受けるためには、特定支出にかかる明細書や、給与支払い者の証明書が必要であることが必要です。そして、相当額の支出をしていないと適用されません。
また、上記は「控除額」であるため、実際の節税額はさらに低くなってしまいます。
以上のように、常勤勤務の勤務医である場合には、必要経費を計上することには限界があります。
つまり、副業を行って経費計上するということのほうが、大きなメリットになるのです。
まとめ
副業を行って経費をうまく使うことで、節税することができることを説明しました。
注意点としては、経費がその副業に必要である内容でないといけないことです。仮に税務署側に質問されても、きちんと説明できる内容であれば問題ありませんが、何でもかんでも経費にはならないため、限度をわきまえることはとても大事です。
参考文献
- ダンゼン得する 知りたいことがパッとわかる 経費になる領収書 ならない領収書がよくわかる本 村田栄樹著 ソーテック社
- 国税庁 No.1100 所得控除のあらまし. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1100.htm
- 国税庁 No.1199 基礎控除. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1199.htm
- 国税庁 No.1415 給与所得者の特定支出控除. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1415.htm
- 国税庁 No.2210 やさしい必要経費の知識. https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2210.htm