医師の給与はなぜ高いのか?高報酬の理由と将来下がる可能性について考察

お金 時間

医師は高収入の職業の代表であり、平成28年の職業別平均年収では航空機操縦士(パイロット)に次いで、2位となっています。

医師の年収は勤務医か開業医か、どの診療科の医師か、都市部で働いているか郊外で働いているかで大きく異なりますが、それでも他職種と比べれば一般に高収入です。

では医師の給料はなぜ高いのでしょうか。正解となる答えがあるわけではないですが、以下のような点が考えられます。

  1. 法律で医師しかできないことが定められている(医師法、医療法)
  2. 医療の発達とともに平均寿命が高くなり、医療を必要とする高齢者が増えている
  3. 需要に対して医師の数が不足している

つまり、このような状況でなくなった場合には、医師の給与は下がると考えられます。実際に都市部の病院、特に大学病院などの医師の数の多い病院では、他の病院と比べて給料が安いことはよく知られている事実です。

厚生労働省が発表する医師の平均年収(図1)を見ると、医師の年収は2010年~2019年まで概ね横ばいで推移しており、高水準を保っています。しかし、この高水準は今後も続くのでしょうか?今後に想定される変化について考察していこうと思います。

図1

① 医師法、医療法について

医師法、医療法は時代に応じて少しずつ変更され続けています。

最近では医師の偏在化により郊外の医師不足が問題となり、地域枠や研修医の定員が導入されました。また、複数の疾患を抱える高齢者が増えたことで、入院のきっかけとなった病気の治療後もすぐには退院ができず、入院の長期化や病床の圧迫が問題となり、地域包括ケア病棟が新設されました。

医師少数区域で一定期間以上勤務した医師に認定制度を作る試みもされており、現在は医師不足を背景として国策としても医師を優遇する方向性となっています。

医師少数区域の若手医師を増やす政策が進む一方で、医療の一定の質を確保する目的で定められた新専門医制度の導入など、国が定める基準での医師の層別化も行われています。

広告制度の見直しなども行われており、専門医への変更手続きを行うなど、国の政策に従わなければ、以前に取得した認定医が名乗れなくなる可能性もあり、医師の給与に関しても国の政策により大きく変わりうることが、想定されます。

② 高齢化と需要の増加

手 3人

日本では少子高齢化が進み、人口統計もピラミッド型⇒つりがね型⇒つぼ型へと移り変わっています。加齢は多くの疾患において大きなリスクであり、高齢化に伴って複数の疾患を抱えて生活する人も増えているます。

一方で、皆保険制度を背景に医療機関への受診の敷居は低くなり、また予防的治療も推奨されていることから、病院へ通院する割合は以前に比べて増加しています。

日本では高額医療費支給制度などもあり、医療費については一定額以上の負担がかからないようになっています。このため透析などの高額な医療を受け続ける必要がある人でも、長期に生存することができ、医療の発展とともに需要は増加しています。

医師の働き方としても病院内での勤務にとどまらず、病院に通院できない人や施設入所者に対しては往診も行っており、医師の需要は計り知れません。

以上のように現在までの時代の流れとしては平均寿命が延びることで高齢者の人数が増えて、医療の需要は増加し続けていました。

しかし、すでに戦後のベビーブームに端を発した団塊の世代が後期高齢者に差し掛かっており、今後は日本の人口の低下とともに高齢者人口も少なくなることが予想されます。

高齢者人口の低下に伴って、医療の需要も低下することが予想されるため、医師が過剰となる日もそう遠くはありません。

また、現時点でも医療費による経済の圧迫が指摘されていますが、労働人口の減少による税収の低下により、国民皆保険制度が維持できなくなる、または維持するために診療報酬が下げられる可能性もあります。

医師はこれまでずっと売り手市場が続いており、年収も高水準を保ってきました。しかし、勤務医・開業医に関係なく、今後もこの高水準が続くかどうかについては注意してみていく必要があると思います。

③ 医師不足と地域格差

ニコちゃん

現在では都市に医師が集中し、郊外では深刻な医師不足であるといったように地域格差が問題となっています。

郊外の病院の中には診療科が揃わず、専門的な検査や治療を受けるために遠方の病院へ紹介したり、専門外の領域の検査や治療を行ったりすることが必要な病院も少なくありません。

立地として日常生活や交通の利便性に乏しいこともありますが、専門外の内容を含めて総合的な診療が必要であることや、専門性の高い診療が行えないことなど、医師の数が少ないことも医者離れの原因の一つとなっています。

郊外の医療機関では医師の待遇をよくすることで雇用を確保する政策をとっているところも多く、先進医療を行う都市の中核病院よりも郊外の病院の方が勤務医の待遇が良いことが多いです。

一方で、この地域格差と医者不足についてはすでに医師法・医療法の改正で都市の中核病院の研修医数の上限を定める、地域枠を設立するなどの国策も始められています。

医療面へのITの導入も進んでおり、将来的には検査結果の遠隔読影やAIによる診療が導入されたり、遠隔診療が認められたりする可能性があります。また郊外の人口自体が著明に減少した場合には病院の移転など、そこでの専門的な医療自体が不要と判断される可能性もあります。

そうなれば、将来的に郊外での医師の需要が低下していくのに合わせて、医師の待遇も悪化すると思われます。

以上のように、医師の平均年収は非常に高水準であり、今後も短期的には高水準を保つと考えられます。しかし、長期的にはその水準が下がっていくことが想定されます。

そのため、給与低下を見越したうえで早い段階から準備を始めていく必要があると考えられます。

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