病院やクリニックを受診する際に、気になる症状や病気をネット検索することは多いものです。例えば、レストランに食事しに行く際に、初めて利用するのならば、そのお店のHP検索をすると思いますが、それは健康情報においても同様です。
実際、新患の6割以上がHPを見てから来院するというデータも存在します。
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000042990.html
また、病気に関する医学知識について詳しくまとめている書籍はあるのですが、Web上でまとめられたサイトは少ないものです。
病院やクリニック、あるいは、製薬会社などの企業HPなどで病気についてまとめているページもありますが、現状では発展途上の段階です。
医師ライターとして、医学医療の専門家として、専門知識やガイドライン、最新の知見などを提供する解説記事の需要は大いにあります。
医師はもともと、学会発表や論文発表、院内勉強会などで、資料作りや発表することが普段から多くあります。ライティング業務は副業の第一歩として最適な選択肢の一つと言えるでしょう。
医師が行うライティングの特徴とは? ライティングってどんな仕事?
ライティングとは、文章を書く仕事のことです。かつては、書籍や雑誌などの紙媒体へ掲載するための文章を書くことがメインの仕事でした。
インターネットが発達した現在では、Webページ上での文章を書くことがメインとなっており、ライティングの需要は高まっています。
その反面、専門家でなくとも情報発信をすることが可能となっているため、誤った知識がWeb上に氾濫している現状もあります。このため、医学や医療の専門家である医師がライティングを行う需要は非常に高いのです。
医師ライターに求められるものとは?
医学医療系の内容の多くは、専門用語も多く理解するにはある程度の前提知識が必要です。
医師ライターはこの専門的な内容、例えば疾患概念や診断、治療法、予後などを、専門知識の少ない人にもわかりやすく文章で解説する仕事を担います。
医療関係者、とりわけ医師がライティングをしているということを明記することで、その記事に権威性が生まれ、読み手にも安心感が高まります。
民間療法のような、正しいのか間違っているのか分からない治療方法だったとしても、医師がライティングをしているということになれば安心して記事を読めるでしょう。 とはいえ、医療系の記事が載っているサイトは多くても、医師ライターはあまりいないというのが現状です。
医学医療系の記事執筆はメディカルライティングとも呼ばれます。
「自分の専門領域しか自信を持って説明できないよ」、と感じられる先生方もおられると思います。しかし、メディカルライティングに求められる内容は、ガイドラインに沿った基本的な医学知識がほとんどです。
実験室レベルの最新の知識を紹介するというよりは、エビデンスの蓄積、つまり時間が経過しコンセンサスが得られた情報について、わかりやすく解説する事例が多いです。
このため、自分の専門領域と離れた分野でも、文献や論文を読む力があればつとまることが多いのです。
エビデンスのある情報を提供することで、国民全体の医療リテラシーの向上に寄与するという仕事は、普段の臨床業務とは異なった新鮮味があり、面白く感じられるのではないでしょうか。
医学論文とは何が違う?
医師の多くは、論文を執筆した経験があると思います。医学論文では、Research articleやReview article、Technical note、Short communication、Case report、Letter、などいろいろな記事の種類がありますが、読者層の多くは医師や研究者といった専門家となります。
つまり前提知識がなければ解釈することが難しい内容となっています。
一方で、ライティングの多くは、医学的な専門知識、最新情報、医療機関や研究所などの様々な情報を一般人にも分かるように解説することが求められます。
医学論文とは読者層が異なるため、よりわかりやすく、より簡単に説明することを意識した文章を必要とされるのです。
院内の勉強会で、いろいろな職種、あるいは患者さんへ病気の解説を行った経験がある医師は多いのではないでしょうか。その時のようなイメージで、専門用語をなるべく使わない、わかりやすい文章で解説すれば良いのです。
SEO対策の知識は必要なの?
Web記事を作成する上で重要視されるものは、キーワード検索に好まれる文章です。自己満足のいく記事を書いても、その記事が多くの人に読んでもらえなければ価値が高まりません。そこで注目されるのがSEOです。
SEOとは、Search Engine Optimizationの略で、インターネット検索をした時に上位に表示されたり、より多く表示されたりするような仕組みを作ることです。
検索システムは常に変化しているため、検索されるキーワードによっては、数日前と今日とでは表示のされ方が変わってきます。そのため、SEO対策として求められる内容はいつも同じとは限りません。
SEOを意識してライティング可能な技術があれば、それに越したことはありません。しかし、ライターはその知識を知らなければできないというわけでもないのです。
実際、SEOについては、編集側が指示してくれることも多いので、恐れることはありません。それよりも医学の専門知識を持つことが、Webライティングにとって大きな武器になっているのです。
医師による記事監修業務とは?
ライティングに類似した業務に記事監修があります。
記事監修では、他のライターが書いた記事を元に、専門的な知識を持つ医師が、その記事内容が正確であるか否かを確認して、誤りがある場合には修正を加えたり、有益な情報を加筆したりすることで記事の価値を高める仕事を行います。
監修医師は実名や写真、経歴を記載することが多くなります。これは記事に権威性を持たせるために必要だからです。一般的な書籍では〇〇教授、〇〇理事長などといったご高明な先生方の監修が多いのですが、Web医療記事ではそのような肩書きではない先生の監修記事も多く見かけます。
ライティング案件を募集しているサイト・企業
医師向けのライティング業務をどのような場所でみつければいいのか、疑問に思うかたも多いでしょう。以下のようなサイトで探すことができます。
- クラウドソーシングサイト
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クラウドワークス(https://crowdworks.jp/)、ランサーズ(https://www.lancers.jp/)、ココナラ(https://coconala.com)など。
- 出版社や企業、医療メディア
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個別案件につき、このページでは割愛しますが、実績を積むとクラウドソーシングサイトやSNS、知り合い経由などでオファーが来るようになります。
医師がライティングを行うことのメリット
ライティングは医師の仕事として違和感がなく入っていける世界
医師は学会発表や論文発表、院内勉強会などで資料作りや発表することが普段から多くあります。メディカルライティングはその延長線上であるという意味で、副業を始めるにあたって最適な選択肢の一つといえます。
ライティングを始めるにあたって初期投資がほとんどかからない
文章を書く仕事であるため、インターネットにつながったパソコンがあればいつでもどこでも仕事が完結します。
職場でも自宅でもカフェでも空いた時間さえあれば可能です。また、時間を有効利用したいという方には、移動中に音声入力することもできます。
つまり、売り上げ金額に対して、ほとんど経費がかからないため、利益率がとても高い仕事であると言えます。
一般ライターより報酬単価が高め
ライティング業務も、スキルがあったり資格があったりすると単価は高くなります。
医療記事を書く場合も、資格を有するライターが高く評価されやすい傾向にあります。
そうは言っても、実績を積んで高単価案件を獲得しない限りは、これまで慣れてきた診療バイトと比べると、時給換算すると割に合わないと感じる方もいると思います。
ただ、給与所得である診療バイトと異なり、ライティング業務は雑所得あるいは事業所得であるため、経費計上が可能なのです。
節税という観点で考えるとメリットが大きくなります。ライティングに使用するパソコン購入費や書籍代などを経費とすることで、支払う税金を節税できることを考慮すると、実質的に時給額が上がる計算になります。
また、実績を積んだり、人脈が広がったりすることで、高単価の案件が継続的に舞い込んできたり、活動の幅が広がるなど、副次的な効果が生まれる可能性もあります。
知識のアップデートを行う機会になる
医学は日々進歩していますので、知識をアップデートしていく必要があります。
自分の専門領域の知見については、学会や専門雑誌などから得ることで定期的にアップデートされていきます。ただ、他診療科の領域となると、最新のガイドラインに沿った対応をすることに自信がない、という医師も少なくないと思います。
ライティングの多くは一般向けに説明する健康情報になります。専門知識をわかりやすい言葉を使って説明するという記事内容を作ることは、いくつかの関連するガイドラインなどを見直す良い機会になります。
自分の専門領域をこえた記事作成をするかどうかは医師個人の自由ですが、専門領域の範囲内で記事作成するにしても、周辺領域の知識に関するアップデートを行うことで、実臨床での患者・家族への説明の際に役立つ場面は出てくると思います。
医師がライティングを行うことのデメリット
実名・顔出し・経歴などの個人情報を載せる影響は大きい?
実名や顔写真、経歴など個人を特定するような情報を公にしなければいけないのかどうか、というのは不安に感じる点だと思います。
ライティングは、そのような個人情報を公表する案件ばかりではありません。記事編集を行う際に、記事作成者と、記事監修者は別々である場合があります。
記事作成するだけであれば、個人情報は載せずに済むことが多いです。一方で、記事監修も行うとなると、記事内容に権威性を持たせるため、実名や顔写真、経歴などを編集側から要求されることが多くなります。その分、報酬の単価は高くなります。
それぞれの立場によって使い分けることが大事になります。
他監修者の名前で記事が発行されることもある
前述のように、記事作成をした後で、記事監修を行う編集作業があります。
この場合、せっかく自分でまとめた文章も、監修する医師の名前で記載されることになります。自分の名前が載らないことはメリットにもなりますが、デメリットに感じる場合もあります。
まとめ
医師は、医学医療に関する専門知識を有していることから、医療ライティングは取り組みやすい副業の一つとなります。
また、専門性の高い記事を作成可能であるため、高単価案件も狙いやすいというメリットがあります。
学会・論文発表、院内勉強会などの資料作りを行った経験も役立つことから、ライティングを副業の第一歩として取り組んでみてはいかがでしょうか。